ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「あの~」
 かわいらしい声が上がり、彼を見上げる男の子がいた。
 近くでは母親が我が子の様子を見守っている。
 まずい、彼が対応したら怖くて泣いちゃう!
 駆けつけようとしたのだが。

「お願いしまーす」
 客がレジに本を持って来て、耀理は慌てる。
 ほかのレジもすべて埋まっていて、誰の手も空いていない。さらに列までできていて、腫れられそうにない。
 会計をしながら横目で見守ると、彼は長い足を折って膝をつき、目線を子どもに合わせた。

「どうした?」
「このご本の続きがほしいです」
 差し出された絵本を見て、彼はにこっと笑う。

 あんな笑顔もできるんだ。
 耀理は呆然とそれを見つめた。見下ろされていたときには怖かった笑顔が、なんだか健やかに見える。

 会計の列が解消したときには、もう史弥と小さなお客様の姿はなかった。
 泣かさずに対応できたかな。本の場所、わかるかな。
 はらはらしていたら、彼は母子と一緒にレジに戻って来る。

「おねがいします」
 子どもが高いカウンターに絵本を差し出すと、ぐっと身を乗り出して受け取った。
 母親が代金を支払うと、またぐいっと乗り出して本を直接、子どもに渡す。

「ありがとね」
「ありがとう、おじさん!」
「こら、お兄さんでしょ。すみません、ありがとうございます」
 母親は慌てて訂正し、子どもを連れて去って行った。手を引かれた子どもは嬉しそうに跳ねたりして母親を困らせている。
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