ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「当時は、親友だから心配してくれてるんだと思ってた。今回もそう。だけど」
 はあ、とため息をついて目をテーブルに落とすと、お通しの小さな白い豆腐に、茶色の醤油がしみのように広がっているのが見えた。箸を入れると、豆腐はたやすく崩れてしまう。

「ついに先週、彼女の本性がわかったの」
 史弥が沈黙で先を促すので、耀理はまた口を開いた。

***

 先週、耀理は史弥に呼ばれて居酒屋に向かった。
 最初の出会いは、店舗だ。彼が営業に来て、店長が休みだったために耀理が対応し、好きなミステリー作家が一緒だったので話が盛り上がった。

 三カ月前、真面目に働く姿に惚れたと告白されて付き合い始めたものの、彼は出版社で土日休み、自分は店舗で平日休み。おかげでまともにデートしたのは二回。

 そのうち一回は親友の新田(にった)紀香を交えての食事会だ。紀香に恋人ができたと報告したらどうしても会いたいと言われて、場をセッティングしたのだ。紀香は「あなたにふわさしい男かどうか見極めて上げる」と言ってくれて、こそばゆい気持ちとともに彼女の変わらない友情が嬉しくなったものだった。

 今回は三回目となる久しぶりのデートだが、億劫な気持ちは否定できない。読みたい本は山積みだし、休みの日に夕方から食事のためだけに出かけるなんて。

 そんな自分が薄情な気がする。恋人と会えないのがダメなのかもしれない。もっとコミュニケーションをとって仲を深める努力が必要だ。
 自分にそう言い聞かせ、おめかしをして出かけた。
 居酒屋について予約した彼の名を告げると、個室へと案内される。
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