ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「職場に押しかけて別れ話の続きをしようなんて、神経疑うね」
「なんでそれを……」

「みんな見てたよ。あんな人目のあるところで、本当に最低!」
 ぷんぷんと怒る美帆に、耀理は絶望した。無神経な慎一のせいで失恋相手が店中に広まったようだ。

「月嶺さんと腕組んで帰ってくのを見て、あいつすっごいがっかりした顔してたよ。胸がすかっとした!」
 自分はふたまたしてから別れたくせにショックを受けるなんて、と耀理は苦々しく思う。

 彼は自分のことをどの程度好きだったのだろう。
 逆に、自分は彼をどれほど好きだっただろう。珍しく告白されて、舞い上がって好きだと思いこんでいただけかもしれない。実際、デートより読書のほうが心ひかれる時間だったし、彼と別れたショックよりも紀香からの暴言のほうに傷付いている。

「月嶺さん、星森さんのこと大切にしてくださいね。もし彼女になにかしたらこの店の全店員を敵にまわしますよ。ほかの書店の店員ともつきあいがあったりしますから、下手すると全国の書店員を敵に回すことになりますね」
「それは怖い。だけど俺は三年前から彼女一筋だから」
 史弥はどや顔で胸をはる。

「全国の書店を敵に回すって言い過ぎじゃない?」
 耀理の疑問に美帆は、わかってないなあ、と言いたげに指を振った。

「今はSNSでみんな繋がってるよ。店長はああ見えて全国の系列店の店長と仲いいし、私だってプライベートのSNSで四省堂(よんせいどう)とか伊国屋(いのくにや)の人と仲良いし。すべての書店員が私みたいなわけじゃないけど」
「そっか……すごいね」
 自分はSNSで本の感想を呟くばかりだから、美帆のコミュ力を素直にすごいと思う。
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