ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「それにしてもよかった~。イケメン売れっ子作家で一途な人と結婚が決まって。サイン会で公開プロポーズとか、ほんとすごい」
 美帆が胸元で小さく手を叩いて祝福してくれるから、耀理は慌てて首と手を振る。

「違います、あれは小説のシーンの再現で」
「照れちゃって~。昨日は仲良く帰ってたじゃない。応援してるからね~」
 面白がってるな、と察して耀理は反論をあきらめた。
 美帆はそのままレジに入る。
 ちらりと史弥を見ると、彼は満足そうな笑みを浮かべていた。

 最初に怖いと思ったせいで強面の印象だったが、冷静に見てみると確かにイケメンだ。女性が悲鳴を上げるのは、もしかしたら恐怖からではないのかもしれない。
 彼の書いた恋愛エンタメ作品はドラマ化やアニメ化、コミカライズもしていて、収入もすごいだろう。自分みたいな庶民とは大違いだ。
 言わば雲上人。そんな人が一度でも自分にプロポーズしてくれたなんて、それだけで人生の記念になるかもしれない。

「どうした、俺に見惚れて」
「見惚れてません。仕事しますよ」
 耀理は彼に言ってレジカウンターに入る。
 彼はにこにこと嬉しそうに耀理について歩いた。



 史弥を休憩に出して、耀理はふうっとため息をついた。
 彼は耀理と一緒に休憩をとりたいと駄々をこね、説教したのちにようやく先に休憩に入ってくれたのだ。
 客が途切れた隙をついて美帆が寄って来る。

「ねえねえ。月嶺さんとはいつからつきあってるの?」
「付き合ってないですよ」
 耀理は軽く説明した。以前暴言を吐かれたこと、サイン会で再会してプロポーズされたこと。あれは絶対に自分をからかっているのであって、本気ではないと思っていること。
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