ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「あなたみたいな大人気作家と結婚したらファンに殺されそうだから絶対に結婚しない」
「絶対に結婚してみせる」
「拒否します」
 そのあとなんとか彼をふりきって帰ったが、シャワーを浴びていてもベッドに横になっても彼の発言の数々が頭に浮かび、忘れられなかった。

 今日、こうして仕事をしていてもついつい思い出してしまう。
 史弥と入れ替わりで休憩に行ったあと、戻った耀理は美帆を始めとしたパートのまなざしが昨日よりも好奇心と温かさに満ちていることに気付いて危機を感じた。

「聞いたよ、耀理ちゃん」
「なにを」
 にまにま笑う美帆に、嫌な予感しかない。

「月嶺さん、元カレに激しく嫉妬してるじゃん。どんな人だったかってすごい聞かれたよ」
「仕事中になにを……」

「ちゃんとお客さんのいない時間に話したよ。月嶺さん、証拠を残さず殺す方法を検索してた」
「本格ミステリーでも書くのかな。なにかあって警察に調べられたら大変なことになりそう」
 あえてとぼけると、美帆はくすっと笑う。

「物騒な単語が検索履歴に残るのは作家あるあるだとは言ってたけど。愛されてるよねえ。ヤンデレ、好きだったよね? 月見猫千夜の『死んでも君を愛してると言い張るゾンビ騎士様の溺愛は拒否します!』も面白かったって言ってたじゃん」
「だからそれはフィクションだからですって。巡回行ってきます」
 うんざりと答え、はたきをもってレジカウンターを出る。

 巡回は大事な仕事のひとつだ。万引きを防ぎ、困っているお客さんがいたら声がけをして、出しっぱなしの本があれば元の場所に返す。文具や雑貨のコーナーは特に乱雑になりがちで、整頓が必須だ。
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