ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 職場の人たちはみんないい人で、だから自分の幸せを祈ってくれているのもわかる。
 だけど、失恋したばかりなのだからそっとしておいてほしい。

 こういうとき、普通はSNSで愚痴を言うものだろうか。
 耀理も一言投稿サイトを利用しているが、内容は主に読書の感想だ。どんな本を読んだとか、こんな本を買ったとか。
 同じ読書好きがひっそりとフォローしてくれていて、フォロワーの数だけは多いが、バズることも炎上することもなく、静かに運用している。

 作家が『感想がもらえると嬉しい』と言ってくれているから、本人に届かなかったとしても書いていこうと思っている。
 今はただでさえ本が売れない。感想を発信することで、誰かが興味を持って本を買ってくれたらいいという願いを込めている。
 お店のSNSの運用も任されていて、いろんな本を紹介している。読書量には限りがあるから、店員仲間からも本の感想を聞いて投稿しているがお客様からは好評で、この店のおすすめははずれがない、と言われたときにはガッツポーズが出た。

 客が引いた隙を見計らい、店のパソコンで一言投稿サイトを更新する。
 今回の話題はもうすぐオープンする私営図書館だ。大手出版社が建てたそれは、有料だがマンガも本も読み放題。持ち出しはできないので図書館よりマンガ喫茶に近いかもしれない。
 イメージ写真を見る限りではシンプルな白い外観なのだが、門から続くアプローチの両側は浅い池になっていて、特別感がある。

『オープンしたら必ず行こうと思います』
 そう締めくくってアップしたときだった。
「そこ、行きたいんだ」
 声が降って来て、びくっとした。
 振り返ると、いつの間にか史弥が立ってパソコンの画面をまじまじと見ている。
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