ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
5 ペットカメラを仕掛けられ
シフトの休みをはさんで早番で出勤すると、鼻歌を歌いながら史弥が現れた。
背の高い彼は書棚の間を歩くだけでも目立つ。まとっているオーラが違って見えるのは、彼が売れっ子作家だからだろうか。
カウンターに来た彼は美帆たちには目もくれず、まっすぐ耀理に寄って来た。
「おはようございます。結婚してください」
「おはようございます。結婚はしません。ご機嫌ですね」
仕事中だから丁寧な言葉で返す。
「あなたのアカウントをフォローしたよ。初フォローがあなたっていうのが嬉しい。しかもあなたのつぶやきを改めて読んだら俺の作品がどれもほめられてて。嬉しくって。前に天乃河静火の本はつまんないって言ってたけど、嘘だったんだね」
耀理は顔をひきつらせた。確かに、アカウントの中で彼の作品を褒めた記憶がある。
「……全部読んだんですか?」
「そうだよ。最初の投稿から全部」
あっけにとられた耀理は、返答するのをやめた。返事をすればするだけ彼のペースに巻き込まれるだけだ。
敬語を忘れているのは注意したほうがいいだろうか。だが、彼につられて自分も敬語を忘れるときが多いから、注意しづらい。
「尊敬するよ。仕事を抱えながら多種多様な本をこれだけ読むのはすごいの一言だ。感想も、そこに触れるんだっていう作家冥利に尽きる内容ばかりだった」
そうでしょ、と返事をしそうになって耀理はぐっとこらえる。だけど褒められて悪い気はしない。ほころびそうになる口元をぎゅっとして耐えた。