ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「取材で書店に来たんですよね。いつまでいらっしゃるんですか」
「急に他人行儀。日にちは決まってないよ。そうだな、あなたが俺に落ちるまではいるかな」
「作家ですよね。執筆はどうなってるんですか」
 言ってから、はっと閃いた。これは使えるかもしれない。

「あなたの新作が読みたいので、家にこもって新作を書いてもらった方が嬉しいです」
「ちゃんと書いてるから安心してくれ。アプリをダウンロードして俺の姿を確認してみて」
 なんの牽制にもならず、耀理は撃沈した。

「月見猫の次作の第一稿ができたら送るから、必ず読んで」
 耀理は思わず声が出そうになり、ぐっとこらえた。

 よ、読みたい……。
 月見猫千夜の作品はデビュー作からずっと追って来た。どれも面白くてお気に入りだ。新作を誰より早く読めるなんて、そんな嬉しいことはない。

 だけど、そうして彼との接触を増やすとますます結婚を迫られそうだ。
 ぐらぐらする耀理の耳に、彼はそっと囁く。

「編集よりも先に送るよ。あなたの好きなアマアマ展開、用意してあるから」
 声すらも甘く、耀理はもう耐えられなかった。

「こ……今回だけ、読んであげる……」
「やった! 頑張って書くからな」
 ご機嫌にカレーを食べる彼を横目で見て、耀理はため息をこぼした。
 どうあがいても彼にはかなわずに術中にはまっている気がする。

 それでもやはり、彼の原稿を最初に読めるなんて、罠でもはまりにいくしかない。
 わくわくしながら食べたカレーは、過去最高においしかった。
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