ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「はっきり言ってくれるのがいいな。また君を好きになった。俺にもっと現実を教えてほしい」
「なに言ってんの。親にどういう教育されたわけ?」
 言った直後、彼の表情が強張った。
 まずいことを言ってしまったのか。焦るが、こぼした言葉はもう取り戻せない。

「俺の両親はさ、いわゆる仮面夫婦だったよ」
 哀愁の漂う声に彼を見ると、彼は手摺にもたれて遠く夜景を見ていた。
 耀理もつい目線を追う。暗闇に浮かぶ光は街を朧に浮き上がらせ、どことなく現実感がなかった。

「父親は仕事ばっかり。母親は趣味にいそしんで、俺には興味がなかった。もしかしたらふたりとも浮気してたのかも。ほとんど家にいなくて、俺はずっとひとりだった」
 作家として成功している彼がそんなさみしさを抱えているなんて、耀理は思ってもみなかった。

「テレビはつまんなくて、ゲームもすぐに飽きた。学校で借りた本を家で読むのが日課だった。司書の先生と話をするのが楽しかったな。本がなかったら俺、孤独でおかしくなってたかもしれない」
「ごめんね、悪いこと言ったね」

「今はあなたがいるから」
 すかさず肩を抱かれたが、今度はふりほどけなかった。

「両親も、結婚したときは愛し合ってたんだろうな。だけど愛が壊れても仮面夫婦を続けた。結婚にメリットがあったからなんだろうけど、俺はそんな結婚はしたくない。愛した人を、死ぬまで……いや、天国に行っても愛し続けたい」
 発言が重い。だけど、この激重発言にいたるまで、彼がどれだけ孤独にさいなまされたのかと思うと、もう何も言えない。

「だから俺はあなたと結婚したいし、一生愛すると誓う」
「……だけど、今は無理。ごめん」

「こっちこそごめん。いつも結論を急ぎ過ぎてるよな。自覚はあるんだ。だけどほかの男にとられたくない」
 耳元でささやかれ、耀理の胸がきゅうっと締め付けられた。
 孤独を癒してあげたい。だけどそれは愛からじゃない。情にほだされて流されたら、お互いに苦しい目に遭う気がする。
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