ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 どうして自分は史弥への印象ばかりを気にしてしまうのだろう。
 考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。

「茶番はもういい。演技だろうと、恋人を奪ったのは事実だろ」
 嫌悪を隠さず、史弥が言った。

「だから奪ったわけじゃなくて……」
「自分が悪者でいいって思ったんだろ? 覚悟を決めたならそれをつき通せよ。二度と耀理につきまとうな」
 はっきり言う史弥に、耀理は目を丸くする。

「耀理。嫌なことは嫌って言っていいんだぞ。未練も罪悪感も必要ない。耀理との関係を壊したのはこいつなんだから」
 彼の言葉で、頭の中の霧が晴れていくように感じた。
 自分はずっと紀香と親友でいたかった。その気持ちを引き摺っていたのだろう。慎一よりも紀香にこそ未練を持っていたのだ。

「私は客なのよ!? 客が店にきてなにがダメなのよ!」
「店員をいたぶりに来る奴は客じゃねーよ。っていうか、急に客って言い出すとか」
 嘲笑された紀香の目は一瞬怒気をはらんだものの、すぐにまた悲痛な色を帯びる。

「あなた、耀理に騙されるてるのね。耀理ってすぐに被害者のふりをして同情を買うの。私もなんども騙されて……」
「いい加減にしろよ。もう二度とここに来るな」
 いらいらと史弥が言う。

「わかってもらえなくって悲しい。だけど、必ずわかる日が来るわ。近いうちにね。耀理は身の程を知るのよ」
 にたあ、と笑う目が真っ暗に見えて、耀理はたじろいだ。
 紀香はそのまま背を向け、エレベーターに向かう。
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