ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
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翌日、耀理はふわふわした気持ちで出勤した。
ロッカールームでエプロンをつけて準備をしたあと、従業員用の通路を歩く。
思い出すのは昨夜の史弥との会話。
とられたくない、なんて言ってしまった。あんなのもう告白したも同然だし、唇じゃなかったとはいえ、男性から初めてキスをされてしまった。今日、どんな顔をして史弥に会えばいいのかわからない。
昨夜の彼は、耀理をタクシーに乗せて帰らせてくれた。
あれだけいつも迫って来ているのに、付け込もうと思えばつけこめたはずの昨夜に紳士的になにもしない。
こんなの惚れないわけないと思う。
だけど、と耀理は自分の行動を顧みる。
今までずっと冷たくあしらってきて、連絡先すら交換していない。
まずは連絡先を交換しよう。どうやって切り出そうか。みんなのいる前では嫌だし……。
そういえば、彼と本の話をあまりしていない。どんな本が好きなのかな。やっぱり純文学? だけどいろんな本を読んでいそうだ。私もいろんな本を読んでいるほうだとは思うけど。
とにかく彼とはもっと話をしてみよう。
そんなことを考えながら売り場に出て、レジカウンターに入ったときだった。
早番で出ていた美帆が、すかさず耀理に寄って来る。その目は興奮できらきらしている。
「昨日、私が帰ってから修羅場だったらしいじゃない」
耀理は青ざめたが、見られていないわけがない、と今さらに気が付く。耀理の死角に誰か店員がいて、もう噂になっているのだろう。
「それって週刊誌の話と関係してるの?」
「週刊誌?」
美帆は逆に驚いた様子を見せた。