ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 どうやら適当なタイミングで手を振っているらしい。
「見てるかどうかわかんないのにやってんのかな。原稿に集中してくれたらいいのに」
 今日休んだのは、原稿のためだったのだろう。締切が近いのだろうか。
 DMをもらっていてよかった、と思いながら耀理はメッセージを打つ。

『お疲れ様です。星森です。原稿がんばってください。手を振ったりしなくていいですよ』
 下書きを打ってから読み直し、後半を打ち直した。

『お疲れ様です。星森です。執筆中ですか? 原稿に集中してがんばってください』
 彼を見ていないふりで送った。見られていると思えば頑張れるとは言われたが、私生活を覗き見した罪悪感が半端ない。

 彼のデスクのスマホがピコンと鳴り、確認する様子が映る。顔をぱあっと輝かせた彼はカメラにぶんぶんと手をふり、今まで以上の勢いでキーボードを打ち始めた。
 見ていたのがバレた気がするが、少しでも応援ができたようでホッとした。



 翌日は彼が出勤してきた。
 にこにこする彼がなぜか眩しくて、耀理は目をそらす。
「昨日はDMありがとう! 嬉し過ぎて返事をするの忘れて原稿がんばったよ!」
「そうですか。仕事中は私語を謹んでください」
「相変わらずだなあ」
 そう言う彼の口調は嬉しそうだ。

 遠い世界の人だと思おうとしても、目の前で親し気にされるとそうは思えなくなる。
 耀理はゆるみそうになる頬をひきしめた。

 彼をレジに残して届いた雑誌を膝立ちで平台に並べていると、週刊誌があった。
 後追い記事だろうか、解英社の週刊誌の表紙には『天乃河静火の公開プロポーズ!? 相手は魔性の女か稀代の悪女か』と題されたものがあった。
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