ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「公開プロポーズしたのは月見猫千夜だし、魔性の女でも稀代の悪女でもないし。普通は魔性の女か聖女か、みたいに対比するんじゃないの」
 ぶつくさと文句を言いながらも耀理は本来のその週刊誌のための位置に、奥にあった雑誌を移動させた。かわりに解英社の週刊誌を奥まった位置に置く。

 自分のようなただの店員は無力で、大手の出版社にやり返すだけの力なんてない。自分にできる復讐なんて、こんなささやかなものでしかない。
 気になって一冊を手に取り、中のページを確認する。

 彼の白黒写真があり、煽情的な文章が踊っている。
 ドラマ化作品に出演した女優と噂があったとか、女性スタッフによく声をかけていたとか、女性にだらしない人物であるかのように書かれている。

 続いて正体のわからない関係者Aさんの証言が載っていた。
『天乃河静火は自作が至上だと思っている傲岸不遜な人物。こんな男と結婚しようなんて、ろくな女じゃないことは確か』

 よくこんなに人を平気で貶められる、と怒りが湧いて来た。
 彼は一時は思い上がっていたようだが、今は反省して真摯に作品に向き合っている。なのにこんなふうに書かれるのは不快でしかない。昨日だって必死に原稿に向き合っていた。

 純文学で評価を得られなくなったからエンタメ作品に逃げている。純文学に向き合うことができなくなった臆病者、という論調だったのも腹が立った。

 だが『あのまま純文学を書いていれば今世紀最高の作家となったであろう』という文章には心臓が止まるかと思った。
 もしかしたら売れない苦しみを超えて純文学を書き続けてこそ作家として大成したのかもしれず、自分との出会いが彼の未来を変えてしまっていたのだとしたら。

「その雑誌ってそこであってますか?」
 通りがかった史弥に声をかけられ、耀理ははっとして顔を向けた。
 天井のLEDを背にした史弥が、妙にまぶしい。
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