ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「なにしに来たの!」
「アカウントを返して」
 耀理が言うと、紀香は鼻で笑った。

「なに言ってんの」
「わかってるよ、あなたが乗っ取ったのは」
 スマホで読書猫のアカウントを見せると、紀香はまた笑った。

「私がやったって証拠はあるわけ?」
「この画像の服、あなたがお気に入りじゃない」
「世の中にどれだけ同じ服があると思うわけ? 髪型も髪色だって違うじゃない」
「あなたは器用だから髪型なんてどうにでもできるわよね。ワンデイカラーもあるんだし」
 かつて彼女がやってくれたことだ。自分を楽しくしてくれたそれらが、攻撃として使われていることに胸が痛い。

「いちゃもん、ひどいわあ」
 余裕のある紀香に、耀理は焦れた。
「お願い、私のことはいいから。天乃河静火と月見猫千夜の名誉を傷つけることだけはやめて」
「そんなに彼のこと好きなんだ?」
 紀香は楽しそうに口の端を歪める。
 耀理はぞくっとした。彼女が素直に頼みを聞くわけがない。弱みをさらしただけなのでは。

「だったら、連絡先を消して」
「連絡先は、知らないの。一言投稿サイトのアカウントしか……」
「はあ!? それなのに夫婦ヅラしてたわけ? プロポーズってほんとにただのファンサだったんじゃん! 売れっ子作家と底辺、しょせんその程度、身分違いよねえ」
 けらけらと大笑いされ、胸をえぐられた耀理はぐっと拳を握って耐える。

「一言投稿サイトでつながってたんでしょ。私の前で新しいアカウントを消して、もう作らないで。彼と二度と会わないで。そしたら私もやめてあげる」
 譲歩したかのような横暴さに、耀理は奥歯を噛み締める。が、ここで反論しては彼を守れない。
< 76 / 121 >

この作品をシェア

pagetop