ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「あんたのそういうところ、ほんっと嫌い! なに言ってもへらへら笑ってて!」
「そう思ってたんだね」
 かつては嘲りを隠したアドバイスを真に受けていたから、感謝で笑顔になっていたのだろう。それを気持ち悪いと思われていたなんて心外でしかない。

 学生時代は明るい場所で輝いている紀香はいつだってまぶしくて、はっきり物事を言う彼女が正しい気がしていた。
 だが、実際にはそうではない。
 こんなこと、三十歳になるまでわからなかった自分が恥ずかしい。いや、もしかしたら無意識に考えないようにしていたのかもしれない。

「ありがとう、消してくれて」
 彼女が攻撃のために新たなアカウントを作ったところで、フォロワーを増やすところから始めなくてはならず、彼女はそんな手間をかける人間ではないし、自分のアカウントで炎上するようなことはしない。

「気持ち悪い、黙りなさいよ!」
 癇癪を起したように怒鳴る紀香に、耀理は黙る。
 いつもそうだ。こうやって怒るから、耀理は黙るしかなくなって、紀香の機嫌をとってやりすごしてきた。
 そう思うと、紀香が調子に乗る責任の一端は自分にあったような気がする。

 だけど、他人なのだ。他人である耀理が紀香の責任を取る必要なんてないはずだ。
 明るい彼女と一緒にいる時間は、確かに楽しい時間もあったし、社交的な彼女を尊敬してもいた。

「じゃあね、さよなら」
「二度と来ないで、ブス!」
 罵倒に背を向け、部屋を出る。
 階段を降りると、お茶を持ってきた紀香の母とすれ違う。
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