ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
2 執着的な再々会
従業員用通路から出た耀理は一礼してから書店の売り場に出る。
昨日のサイン会はさんざんだった。
結局サインはもらえなかった。いや、それどころではないのだけど。
あのあとは逃げるように帰り、自宅で震えた。こういうとき、ひとり暮らしは恐怖が倍増する気がする。家族と同居なら、誰か人がいる安心感があるのに。
会いたかったとか、なんの冗談だろう。いやきっと嫌がらせだ。結婚を申し込むなんて嫌がらせは初めてだが、三年前のことを恨みに思っていて、たまたま再会したこの機会にと復讐したに違いない。なんと執念深いのだろう。自分だって覚えてはいたけれど、恐怖が刻まれているからであって、恨みではない。
休みの日で良かった。もし勤務先だとバレていたら、ほかにも嫌がらせをされたかもしれない。彼だって立場があるのだから迂闊なことはしないだろうけど。
もう気持ちを切り替えなくては。
大好きな本たちを、今日も頑張って売るのだ。
背筋を伸ばしてレジに向かう途中、店長の山岩宏に呼び止められた。五十代の彼は白髪交じりの気のいいおじさんという外見をしている。
「星森さん、おはよう。新人が入ったから面倒見てくれないかな」
「おはようございます。急ですね」
「そうなんだよ。本社経由で頼まれてさあ。三十一歳だったかな。歳が近いから仲良くできるんじゃない? 紹介するから来て」
本社経由のコネとはただごとではない気がする。めんどくさい人間ではなければいいが。
耀理は警戒しながら宏のあとについていく。
一緒に行った棚の前には背の高いスーツの男性が立っていて、耀理はびくっと震えた。そのシルエットは昨日見た月見猫千夜に似ている。