ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 まさか、と思っている間に宏が声をかけ、彼が振り返る。
 視線がからんだ瞬間、男は満面の笑顔になった。が、その鋭い目は笑っていない。
「昨日はどうして帰ったんだ!? せっかく感動の再会をしたのに!」
 いきなり抱き付かれ、耀理は悲鳴を上げた。

「痴漢!」
「失礼だな、夫を痴漢呼ばわりとか」

「夫だったのか。先に言ってよ。てか、星森さんて結婚してたっけ?」
「してません!」

「よくわからないんだけど。とりあえず離れてくれますか。うちの大事な社員なんで」
 宏の言葉で、彼はしぶしぶ耀理から離れた。
 耀理は荒くなった呼吸を鎮めようと胸に手を当てる。心臓は驚愕と恐怖でばくばくと鳴っていて、今にも口から飛び出しそうだ。

「星森さん、こちらは昨日のサイン会に来ていらした月見猫千夜さん。本名、月嶺史弥(つきみね ふみや)さん。今日からバイトとして働いてもらいます」
「どうして!?」
「あなたに会いたかったから」
 にらまれて、耀理はまたビクッと震えた。

「こちらは体験取材と聞いていますが」
 宏が不思議そうにたずねる。
「ああ……そうです、取材です。昨日の今日で無理言ってすみません」
 素直に頭を下げる彼に、耀理は混乱する。どうして他の人には丁寧なのだろう。それだけ自分がなめられているのだろうか。
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