ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
『あなたと彼の間に特別な数字がありませんか?』
「特別な数字……」
 そんなものにはまったく心当たりがない。

『お願いします。あなただけが頼りなんです』
「……考えてみます」
 耀理は電話を切り、再びアプリにアクセスした。
 四桁の数字を入力する欄で、カーソルが無機質に点滅している。

 彼が特別に思う数字はなんだろうか。
 もしかして初めてのデートの日? それは彼にとって特別だろうか。
 初めて会った日は、暴言を浴びせられた日。だけど日にちなんて覚えていない。

 彼ならどの数字を選ぶだろう。
 迷えば迷うほど、出会った日を暗証番号にしているようにしか思えない。

 あれはいつだっただろうか。
 三年前。仕事は休みの日だった。その程度しか覚えていない。
 たしか、お気に入りの作家さんの本を買いにわざわざでかけて……。
 そうだ、発売日に買いに行った。だったら発売日を検索すれば出てくるはずだ。
 すぐさまスマホで検索し、その日を見つける。

 が、その数字を見てまた迷いが生じた。
 もし西暦のほうを暗証番号に設定していたら?
 日にちとどちらを選ぶだろう? 
 普通の人なら日にちだろう。だが、彼はちょっと普通じゃない。作家というのはひねくれているとも聞くし、果たしてどちらだろうか。

 迷って、それから、最初のパスコードが彼の誕生日だったことを思い出す。
 誕生日にしていたなら、ここでも日にちを選ぶはずだ。まわりくどい彼だが、いつだって気持ちはストレートに伝えてくれていた。素直に日にちを暗証番号にしているだろう。
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