ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「連絡、来た」
 見せられたDMのアカウントは今日作ったばかりのようだった。

「文章の特徴が一致してるからあいつだと思う」
「うん……私も紀香だと思う」
 紀香はずるがしこく自分のアカウントを温存しているのだろう。そうして、結局は訴えられるのが怖くて新しいアカウントで連絡をしてきたに違いない。

「本人確認してから会う日を決めるけど……またこいつに会わないといけない。覚悟はいいね?」
「大丈夫」
 耀理は頷く。
 一緒に史弥がいてくれる。こんな心強いことはない。



 週末、さっそく紀香と会うことになった。
 場所は高級ホテルの一室。彼が雇った弁護士も一緒だ。
 彼も耀理も、スーツを着ていた。正式な交渉の場であることを強調するためだ。

 当日、紀香は小さなバッグを肩にかけてひとりで来た。
 デートに行くようなおしゃれな服装であり、スーツを着た耀理、史弥、弁護士がいる場ではひとり、浮いていた。
 部屋に入るなり、紀香は耀理に文句を言う。

「服装指定ならそう言うべきじゃないの」
「こういう場ならそれなりの服装をしてくるのは大人のたしなみだと思うけど」
 スーツでなくともひらひらした格好は不釣り合いだろう。ここまできて、紀香は事態を甘く見ていることの証左だ。

「浅沼さんと一緒に来るかと思ったわ」
「あんな男、とっくに振ったわよ。役立たず」

「どういうこと?」
「あいつ、なんの力もないじゃない。その上、書店に嫌われてやばいとか言い出して」
 耀理が首をひねると、隣にいた史弥が教えてくれた。
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