ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「店長から聞いたよ。名前こそ出してないけど、解英社の男が書店員をたぶらかしたあと、こっぴどく振った噂が回ってるって。たぶんそのせいで書店員が解英社に復讐を始めたんじゃないかな」
「復讐って」
 耀理はけげんに史弥を見る。

「本を返品したり、解英社の本を売れない場所に移動させたり。独占禁止法に反しない範囲でやってるみたいだな。俺が見た範囲では、他社の本を大々的にコーナー展開していたな。俺の作品の応援コーナーを設置してくれているところも多かった。もちろん、解英社の作品以外で。結果はすぐには出ないけど、全国でやられたらとんでもない損失だ。営業で書店を回ってやばいって気付いたんだろうな」

 耀理は唖然とした。確かにそれを実行されたら出版社にとってはかなりの痛手だ。電子書籍もあるし通販もあるが、今でも店頭での紙書籍の売上が一番多いのだから。

「あなたがなにか言ったの?」
「俺はなにも。根回しはあなたの仕事仲間だろうな。出版社は書店での売り上げが重要だってわかってるから営業を配置しているのに、あいつは考え方が甘かったな」
 吐き捨てるその目には静かに怒りが燃えている。

 そういえば、店長は全国の店長と仲がいいと聞いた。美帆はほかの書店にSNSでの友達がいると言っていた。彼女らが密かに呼びかけてこの事態になっていたのだとしたら。
 店員ひとりにはなんの力もないと思っていた。なのに、つながる人たちの力で大きな出版社を揺るがす力になるなんて。
 それを自分のためにやってくれたなんて。みんなの気持ちが伝わるようで、耀理の胸が熱くなる。

「あんな男のことはどうでもいいわ。来たんだからもう訴えないわよね」
 上から目線の紀香に、史弥のこめかみが怒りでぴくっと動いた。

「お前、よくもそんなこと言えたな」
「月嶺さん」
 耀理が止めると、史弥は口を閉じる。が、その目はずっと紀香をにらんでおり、視線だけで殺しそうな勢いだ。

「始めてもよろしいですか」
 弁護士に言われ、彼らは対面でテーブルについた。
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