腐女子がオフ会で知り合ったのは腐男子でした
「ここから目的地まで、どれぐらい時間がかかるの?」

「うーん、そうだな。歩いて十分くらいかな」

思ったよりも時間がかかるみたいだ。その分、美咲くんと長く手を繋いでいられるから、それはそれでいいけど。

「十分か。それなりに歩くね」

「ごめん。俺が車持ってないから歩かせちゃって…」

そういう意味で言ったわけじゃないが、そういう意味で言ったみたいに受け取られてしまった。
慌てて訂正した。そんなことは望んでいないと伝えたい。

「ごめん。そういう意味で言ったわけじゃなくて、十分歩くんだなって思っただけで、深い意味はなかったの。言い方が悪くてごめんなさい…」

上手く伝えたかったのに、あまり上手く伝えられなかった。これじゃただ言い訳しているだけに過ぎない。
それでもなんとか美咲くんに想いが伝わっていることを願った。

「そういう意味だったのか。誤解してごめん。結構歩くことになるけど、その分一緒に居られる時間が長くなるから、俺は嬉しい」

そんなことを言われてしまえば、嬉しくて照れてしまう。いつも言葉で伝えてくれるところが、美咲くんの素敵なところだなと思った。

「うん。長く一緒に居られるから、楽しみが倍増だね」

「可愛い。思わずキスしたくなったけど、人前だから我慢する」

時々見せる雄味が、最近増えた。その姿にドキドキする。
そんな彼に、私も密かに心の中でキスしたいと思った。

「…もう、バカ」

照れながら下を向き、小さく呟いた。その声が微かに届いたのか、美咲くんは恥ずかしそうに小さく、「ごめん…」と呟いた。
私は「大丈夫…」とだけ答えた。
その後はお互いに気ますぐなり、無言のまま目的地まで歩いた。
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