妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
第36話 sideリリス
それからしばらくして、私たちの屋敷にベルナドが訪ねてくる。
彼は以前と同様に大きめの鞄を手に持っていた。私たちの前で鞄を開いた彼は、幾つかの道具を取り出す。目の前のテーブルには首飾りや筒状の何かや、腕輪などが置かれていく。
私たちが興味深そうにそれらの品を見ていると、彼は満面の笑みで私たちに声を掛けた。
「準備に手間取りましたが、お望みのものを用意することができました」
そう言った彼は、左端に置かれていた首飾りのひとつを手に取った。
「こちらは加護を付与する道具でございます。湖底の街は女神の加護がなければ入ることができませんが……こちらの首飾りをすれば、加護を得ることができます。ついでに水の中でも息ができるようになっております」
「水の中に……」
「心配であれば、試してみませんか?」
お父様は狼狽えながらも頷いた。
ベルナドは桶に水を溜めて持ってくるように告げる。お母様はそれを聞いて、部屋の外にいるメイドへと命じた。
しばらくすると、桶を持ったメイドが部屋へと入ってくる。そしてテーブルの真ん中へと置いていくと、彼女は部屋を後にした。
「首飾りを首にかけていただいて……あ、そうです。それで問題ございません。そのまま桶に顔を入れてみてください。息ができるはずです」
意を決したのか、お父様はベルナドに言われたように首飾りをつけてから水へと顔をつける。しばらくして息苦しくなったお父様が口を開けると……。
「いきが……いきができる……」
水の中で喋っているにもかかわらず、はっきりと聞こえる声にお母様と私は耳を疑う。これがベルナドのいう加護の力か。
彼は驚きを隠せない私たちを見ると、満足げな表情で話しかけた。
「それでは公爵様、水から顔を出して自分の頬に触れてみてください」
「あ、ああ」
お父様は言われた通りに顔を上げて、頬に触れる。それと同時に目を見開いて、ベルナドを見た。
「濡れていない……」
そう呟いたお父様の顔をじっと見てみる。確かに顔に水をつければ、水滴が垂れてくるはずなのに……お父様の顔にはそれが全くない。
唖然とするお父様に、ベルナドは楽しそうに告げる。
「そう、そうなのですよ。身体も濡れませんし、息もできる。加護の力はすごいでしょう?」
「これを王家に献上はできないのか?」
お父様は首飾りを指さして訊ねるが……彼は首を左右に振る。
「生憎効果は一回のみ、効果は半日しか持ちませんので……それに女神の街自体を領地として献上してしまえば、魔道具は回収し放題ですから」
「そしてエーヴァを取り戻せば元通り、と言うことだな」
「そういうことです」
ベルナドは私たちに人の良い笑みを浮かべる。なんだか、その笑みを見ていると上手くいくような気がする。
――だから三人は気づいていない。
元々はリリスが聖務者であり、身を投げる必要があることに。
そして三人を見つめるベルナドの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。
彼は以前と同様に大きめの鞄を手に持っていた。私たちの前で鞄を開いた彼は、幾つかの道具を取り出す。目の前のテーブルには首飾りや筒状の何かや、腕輪などが置かれていく。
私たちが興味深そうにそれらの品を見ていると、彼は満面の笑みで私たちに声を掛けた。
「準備に手間取りましたが、お望みのものを用意することができました」
そう言った彼は、左端に置かれていた首飾りのひとつを手に取った。
「こちらは加護を付与する道具でございます。湖底の街は女神の加護がなければ入ることができませんが……こちらの首飾りをすれば、加護を得ることができます。ついでに水の中でも息ができるようになっております」
「水の中に……」
「心配であれば、試してみませんか?」
お父様は狼狽えながらも頷いた。
ベルナドは桶に水を溜めて持ってくるように告げる。お母様はそれを聞いて、部屋の外にいるメイドへと命じた。
しばらくすると、桶を持ったメイドが部屋へと入ってくる。そしてテーブルの真ん中へと置いていくと、彼女は部屋を後にした。
「首飾りを首にかけていただいて……あ、そうです。それで問題ございません。そのまま桶に顔を入れてみてください。息ができるはずです」
意を決したのか、お父様はベルナドに言われたように首飾りをつけてから水へと顔をつける。しばらくして息苦しくなったお父様が口を開けると……。
「いきが……いきができる……」
水の中で喋っているにもかかわらず、はっきりと聞こえる声にお母様と私は耳を疑う。これがベルナドのいう加護の力か。
彼は驚きを隠せない私たちを見ると、満足げな表情で話しかけた。
「それでは公爵様、水から顔を出して自分の頬に触れてみてください」
「あ、ああ」
お父様は言われた通りに顔を上げて、頬に触れる。それと同時に目を見開いて、ベルナドを見た。
「濡れていない……」
そう呟いたお父様の顔をじっと見てみる。確かに顔に水をつければ、水滴が垂れてくるはずなのに……お父様の顔にはそれが全くない。
唖然とするお父様に、ベルナドは楽しそうに告げる。
「そう、そうなのですよ。身体も濡れませんし、息もできる。加護の力はすごいでしょう?」
「これを王家に献上はできないのか?」
お父様は首飾りを指さして訊ねるが……彼は首を左右に振る。
「生憎効果は一回のみ、効果は半日しか持ちませんので……それに女神の街自体を領地として献上してしまえば、魔道具は回収し放題ですから」
「そしてエーヴァを取り戻せば元通り、と言うことだな」
「そういうことです」
ベルナドは私たちに人の良い笑みを浮かべる。なんだか、その笑みを見ていると上手くいくような気がする。
――だから三人は気づいていない。
元々はリリスが聖務者であり、身を投げる必要があることに。
そして三人を見つめるベルナドの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。