妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 私はノアと二人で食事を取ると、アダン様のところへと向かう。どうやらアダン様の仕事は終わっていないのか、机の上には書類の山が……。

「アダン様、お仕事は大丈夫?」

 眉尻を下げて声を掛けるノア。その声で私たちの存在に気がついたのか、アダン様は顔を上げた。

「ああ、これが終われば問題ない。ノア、先にエーヴァと街に向かうといい。私も後で向かう」
「しかし……」

 私が思わず声を漏らすと、アダン様は微笑んだ。

「ノアが君と祭りを巡るのを楽しみにしていたようだからな。ノア、彼女を案内してやってくれ。頼まれてくれるか?」
「……! うん! わかった!」

 嬉しそうに返事をするノア。どうやらアダン様にお願いされたのが嬉しいらしい。

「君もノアに案内されてあげてくれ。この量であれば、昼前には終わるから心配しなくていい」
「……ありがとうございます」

 後ろ髪を引かれる思いもあったけれど、彼が大丈夫と言うのなら問題ないだろう。そう判断した私は、頭を下げてからノアと共に部屋を出て行った。

 ノアと私は大通りを歩いていた。
 普段ももちろん活気があるけれども、今日はお祭りだからかそれ以上である。周囲を見渡せば大人たちが屋台を作っており、できた屋台に子どもたちが協力して商品を運び込んでいる。
 どこもかしこも楽しそうな笑い声が周囲に響き渡っており、この街がとても良い場所であることを実感した。

「エーヴァ、どうしたの?」

 私が周囲をぼーっと見ていたからか、どうやらノアを心配させてしまったらしい。慌てて顔を向けてから、にっこりと笑った。

「ごめんなさい。とても活気があって素敵な街だな、と思って魅入っていたの」

 そう話すとノアは嬉しそうに笑う。

「うん、やっぱりアダン様はすごいや!」
「ええ。あとは女神様にも感謝を捧げなくてはね」

 そう言って笑い合う私たちの声を聞いたのか、近くにいた女性が私たちに話しかけた。

「ああ、この街は最高だね! ところでお嬢ちゃんとお坊ちゃん、私の店で何か買ってかないかい?」

 彼女の手のひらの上には、平べったい透明な石らしきものが置かれていた。
 珍しい物なのだろうか、ノアが目をキラキラと輝かせている。
 
「ふふ、見せていただいてもよろしいですか?」
「もちろんさ! ささ、こっちだよ!」

 ノアと私は彼女の案内で店を見始めた。それを合図に、準備ができた屋台は呼び込みを始めている。どうやら祭りが始まるようだった。
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