妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 リリスはアダン様が庇ったことに苛立ちを感じたのか、後ろにいる私を睨みつけてくる。それは後ろにいる二人も一緒だった。
 しかしその表情は一瞬のこと。すぐに可愛らしい笑みに戻り、猫撫で声を出しながら私に話しかけてくる。

「お姉様、お元気そうで私は嬉しいですわ」

 感情のこもっていない冷たい声で言われ、私の肩は小さく跳ねる。そんな私の姿をみっともない、とでも思ったのか……リリスは鼻で笑った。

「まさか湖底に街があって、そこで暮らしているとは思いませんでした。幸せそうで何よりですわ」
「……リリスは、なぜここにいるのかしら?」

 目の前の彼女は、僅かな間目を見開く。どうやら私が声を掛けたことに驚いているようだ。
 
 ……いつの間にか私はリリスたち三人が見える位置に立っていた。
 先ほどまでの震えは治りつつある。これはきっと、庇おうとしてくれたアダン様がいるからだ。家族とは相入れなかったけれど、私はそれ以上に大切な人たちがいるのだ。

 ここで怯えてばかりはいられない――

「もう一度聞きます。三人は何故ここにいるのでしょうか? ここは女神デューデ様の加護がある国ですよ」

 そう告げた私に最初は気押されていた三人だったが、しばらくしてリリスが我に返ったあと、含み笑いをする。

「さあ、なんででしょうね? でもこれだけは言っておくわね。私たちはエーヴァを迎えに来たの」
「迎えに……?」
 
 私はリリスの言葉に手足が重くなったような気がした。彼女はそんな私の一瞬の変化を目敏く見つけたのか……今までに見たことのない笑顔を見せる。
 
「ええ、だって、もともと私がここに来るはずだったんでしょう? ずるいわ、エーヴァ。こんな素敵な男性に庇ってもらえるなんて」

 そう笑いながら告げるリリスは、どこか壊れたブリ木の玩具のよう。しかし、彼女の視線はすでにアダン様へと向けられていた。まるで恋する乙女のような見惚れた表情を浮かべている。

 そしてリリスはアダン様に近づき……彼の大きな胸元へと飛び込んでいく。
 
 ――まるで恋人のように。
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