妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

第40話 家族の影

 最初は顔から血の気が引いていた私だったが、ふと三人の……特に公爵継母の雰囲気に首を傾げる。
 
 ――冷静になって考えるとおかしい。
 だって、リリスと離れたくないがために私を身代わりにした者たちだ。それなのに、今や離れることが同然と言わんばかりの行動。本当にあの人たちがリリスを手放そうとするのだろうか、と思う。

 それに……特にあの二人は、目の焦点が合っていないような気がした。表情、仕草、感情の動き……まるで全てが作り物めいているよう。

 そんな中で私が目に入ったのは、胸元にある首飾りだ。リリスだけではない。公爵と夫人にも同様の物が掛かっている。じっと見つめていると、どうやら私が首飾りを欲しがっていると思ったのか、彼女は鎖を持ち上げてこちらに見せつけてくる。
 
 血のように赤い石。周りに掛かっている靄が更に不気味さを煽っている。まるで闇夜のような……背筋に冷たいものが走ったような禍々しさを感じた。

「リリス……あなた、そんな綺麗な首飾り……持っていたの?」

 リリスは毎回私に、購入した商品を見せびらかしてくるのだ。その中にあのような強烈な光を放ち、派手な色の首飾りはなかったはず。
 私の賞賛と疑問に、リリスは気を良くしたようだ。その首飾りを掲げながら話し始めた。

「うふふ、これは私たちが幸せを掴むために用意してもらったものなの。これには女神の加護が掛けられているそうよ? これのおかげで、水の中では苦しくないの」
「女神様の加護……?」
「ええ、良いでしょう?」

 隣にいるアダン様を一瞥すると、偶然視線だけが交わる。彼ももしかしたらリリスの言葉に思うところがあるのかもしれない。
 
 そもそも、女神の加護はあんな不気味な影を纏うものだろうか……この王城にある魔道具で、女神様の加護が掛かっているものを見させてもらったことがあるけれど、その時は水のように透き通った水色の霧のようなものを纏っていたはずだから。
 
「ある商人が私たちに似合うから、とくれたのよ。お父様もお母様も同じものをもらっているわ……それよりも」

 リリスは私より上の立場である、ということを誇張したかったのだろう。しばらく喋り続けると、私への回答に飽きたのか、そっぽを向いた。
 しかし、その後……彼女が次に視線を送ったのは私、ではなくアダン様。優雅に微笑んでいるように見えるが、目が笑っていない。リリスはまるで餌を狙う獰猛な動物のように、舌舐めずりをしていた。

「あなたがアダン様? エーヴァなんかより、私の方が全てにおいて優れていますわ。こんな出来損ないよりも、私をあなたの隣に置いていただけませんこと?」
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