妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 いつの間にか身体の震えは消えている。

 怖くなかった。だって、一人ではないのだもの。
 それに、私の保護魔法は「攻撃魔法」ではない。だから、相手も防ぐことができないのだ。

 二人はそのことを理解できていないのだろう。
 まだ自分が優位であると疑っていない。
 
 それに、ここで弱さを見せてはいけない。見せたら延々と彼らは私を搾取しようと手を伸ばしてくる。
 私はここで家族という檻を壊すのだから。
 
 そして、アダン様を守るんだ……!
 
 夫人は私の迫力に少し尻込みをした。私に反抗されるなんて思ってもみなかった、と言わんばかりに。しかし、今回は怒りの方が勝ったようだ。

「生意気な目ね……!」

 そう言って手を高く上げた瞬間――

『やめろ』

 聞き覚えのある……けれども、普段よりも数段低い声が聞こえるのと同時に、目の前に大きな背中が再度映る。見覚えのある後ろ姿に、私は胸が高鳴った。

「アダン様……」

 こちらからアダン様の表情は見えないけれど、二人の顔から血の気が一気に引いている。彼が私を守ってくれたのだ……その事実に私は、胸の奥底から感情が込み上げてくる。
 ふと見ると目の前にいる夫人とリリスは、中途半端な格好で留まっている。いや、身体を固定されている、といえば良いか。二人は口を動かそうとしても、まるで縫い付けられたように動かすことができないようだ。
 そして床に転がっていた公爵も……そのままの状態で動けずにいた。

 夫人とリリスはアダン様が動いていることを信じられないようだ。目を白黒させて、彼を見ていた。
 
「すまなかった。油断していた」
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