妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 魔術花を見終えた後。
 私はアダン様と共に、エルマーさんのいる警備室へと向かっていた。そこに、ノアがいると聞いていたので迎えにきたのだ。

 扉を開けると、ノアは一目散に私の元へやってきて抱きついてきた。私はその勢いで倒れそうになったが、腰を支えてくれていたアダン様のお陰で彼の衝撃も受け切ることができる。

 どうしたのだろうか、と私はノアの顔を窺うと……彼は目に涙を溜めて、私の胸で泣きじゃくっていた。
 
「エーヴァ! どこにも行かないよね?!」

 何の話だろうか、と首を傾げていると……目の前にいたエルマーさんが事情を話してくれた。どうやら、私の元家族たちの言葉を魔術花が終わった後に、偶然聞いてしまったらしい。そこから私が地上に戻ると思い込んでしまったのだという。

「嫌だよ、僕、エーヴァと、一緒が、いい、よぉ……」

 段々と弱々しくなってくる声。
 袖を絞る必要がありそうなほど、とめどなく流れるノアの涙。

 私はノアには申し訳ないと思いつつも、温かなものが胸に広がっていく。

「ノア、私はどこにも行きませんよ。ここにいます」

 そう言いながら、私は膝を地面について彼を優しく抱きしめる。ノアは私の行動に驚いたのか、目を白黒させている。嗚咽は引き続き出ているけれど……涙は止まったらしい。

 私はノアと視線を合わせた。

「大丈夫よ、ノア。私はここで暮らすから」
「うん……うん! 良かった!」

 彼の目からはまた新たな涙が滲んでいたが……それは悲しみの涙ではないことは、誰から見ても明白だった。
< 148 / 150 >

この作品をシェア

pagetop