【完結】妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
「……!」

 恥ずかしさから小声ではあったが、思いがけず私の声は周囲に響き渡る。アダン様も言葉が聞こえたのか、口が半開きの状態で固まっていた。
 そんな空気を切り裂いたのは、イルゼさんだ。

「あらあらあら、まぁまぁ! エーヴァちゃん、それは素敵ね! それなら、これはどうかしら?」

 彼女は楽しそうな表情で、鞄から何かを取り出した。よく見ると、それは手のひらの大きさしかない。

「これは……?」
「私が最近手作りした小袋なの。余った布で作ったのだけれど、使い道がなくてねぇ〜。良かったらこれに入れて使ってもらえると嬉しいわ! それなら指も傷がつかないでしょう?」
「まあ、それなら問題ないだろう」

 アダン様の許可を得て、はい、と手渡されたそれと、イルゼさんの顔を私は交互に見る。そして、アダン様から戴いたベリルを引き続き持てる、という事実が……胸から嬉しさとともに込み上げてくる。

「あ……ありがとうございます! イルゼさん、嬉しいです!」
「ふふふ、解決して良かったわ!」

 そう言ってから、イルゼさんはティーポットのお代わりを持ってくると、配膳ワゴンを押して食堂へと向かっていく。私は小袋にベリルをひとつづず入れた後、嬉しさから胸の前で握りしめた。
 
 視線を感じた私は顔を上げる。その時、こちらを見て微笑んでいるアダン様と視線がぶつかった。
 彼は心なしか普段よりも口角が上がっているような気がする。

 そんなアダン様が口を開いた。

「エーヴァ。良ければまた、装飾品を贈ってもいいだろうか?」
「良いのでしょうか?」
「ああ、私がエーヴァに贈りたい」

 彼の言葉に私の頬は一気に熱を持った。
 
「……嬉しいです」

 私の口からは……素直な言葉が次々と紡ぎ出される。それもこれも、嬉しい時には『嬉しい』と、悲しい時には『悲しい』……その時々の感情を表に出すようにと言葉や態度で教えてくれたネレイダの街の人たちのおかげだ。
 
 そして……。
 私はお慕いしている目の前の男性を見つめる。
 
「次の休み、一緒に街へ行こうか」
「はいっ」

 差し出された手に、私の手を乗せ……二人で微笑み合う。すると、元気な声が遠くから聞こえてきた。

「アダン様〜! エーヴァ〜! 僕頑張ったよ〜!」
「ノア様! 廊下は走ってはいけません!」

 息を切らして走るノア。それを注意するレナートさん。
 
 ……変わらぬ普段の日常が戻ってきた。
 ここに、私の幸せはあるのだ。



ーーーーーーーー
【作者から一言】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
エーヴァとアダンの物語はここで一旦終了となります。
似た境遇で生きていたエーヴァと、アダンの成長を感じていただけたら嬉しいです。

皆様からのいいね等の一つ一つが、何よりの執筆の励みになりました。
是非一言感想やレビューをいただけると嬉しいです!

また完結作、「虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ」もございます。
是非こちらもご覧ください♪

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