妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

第24話 女神の加護

 空の街から戻った数日後のこと。
 執務室でアダン様の業務の振り分けをしていた私の元に、セファーさんが現れた。音もなく現れた彼が、仕分けをしている私の目の前に現れ……いつの間にか手元を覗き込んでいるので、私は驚いて甲高い声をあげてしまう。
 楽しそうに笑っているセファーさんを見たアダン様が、遠くでため息をついていた。どうやら、セファーさんは驚かすのが好きで、いつも話しかける時は相手が気づくまで静かに佇んでいるのだとか……。

「そうそう、以前アダンが気づくまで待っていたら……全然気づかれなくてさぁ。昼過ぎから陽が落ちる頃まで、ずっと目の前でアダンの様子を見ていたこともあったよぉ〜。流石に僕もビックリしちゃった!」
「……集中すると周りが見えなくなるらしいからな」

 バツが悪そうな表情をするアダン様。
 元々アダン様の集中力の凄さは自他共に認めるお墨付き。その時は他の方も出来心で、セファーさんの存在をアダン様に伝えなかったそう。
 セファーさんも急ぎの用事でなかったこと、アダン様がいつ気がつくか試してみたかったこともあり、実行に移されたらしい。

 その時のことを思い出したのか……アダン様は恥ずかしそうに頭を掻いている。そんな彼を見ながら、セファーさんは満面の笑みで話しかけた。

「アダンはあの時に比べたら、きちんと会話ができるようになったよねぇ〜良かった良かった!」
「……そうだな」

 どうやらセファーさんの言葉に思い当たる節があるのか、彼は同意する。そんな様子を楽しげに見つめていたセファーさんが、いきなり私へと顔を向けた。

「それもこれも、エーヴァちゃんのお陰だね♪」
「私……ですか?」

 全く心当たりがなかった私は首を傾げる。

「私は何もしていないと思います。アダン様の努力の結果かと」

 思ったままにそう伝えると、アダン様は目を見開く。一方でセファーさんも、最初は目を丸くしていたが途中から私の言葉に同意するかのように頷いていた。
 二人に褒められたと感じたのか、アダン様は照れくさそうにしていたけれど……仕切り直すために一度咳払いをしてから、セファーさんへと身体を向けた。

 「それよりも、今日は何の用だ?」
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