妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 そうアダン様に訊ねられたセファーさんがにっこりと笑う。

「そうそう、今日はエーヴァちゃんに用事があってね?」
「私……ですか?」
「そう、そろそろエーヴァちゃんにも『女神の加護』を与える時期だとディーデ様から神託をいただいたからね。儀式をしようかと思って」
「おや、もうそんな時期でしたか」

 扉側から別の人の声が聞こえたため、思わず声のする方へと振り向いた。すると、そこにいたのはレナートさんだ。
 レナートさんは山のような書類を抱えている。他部署から回収してきたものだろう。彼は私と反対側に置かれている机の上に書類を置くと、口を半開きにしている私に話しかけてきた。

「驚かせてしまいましたね」
「いえ、大丈夫です」
「女神の加護を授かるのでしたら、儀式の後大変でしょうから……残りの書類は私が処理いたしましょう」

 レナートさんの言葉に私は首を捻る。
 加護を得ることがそんなに大変なのだろうか? 甚だ疑問である。彼の言葉にセファーさんも首を縦に振っている。どうやらとても大変なようだ。

「幼い頃に与えられるものであれば、少しずつ馴染んでいくのですが……エーヴァさんは既に身体が出来上がっておりますから、受け入れるのに時間が掛かってしまうのです」
「レナートの言う通りだねぇ。適性があればすぐに馴染むんだけど、エーヴァちゃんはどうなんだろう? こればっかりは受けてみないと分からないからねぇ」
 
 そう言って肩をすくめるセファーさん。私は早く馴染んでくれると良いな、と思っていた。
 
 歩きながらセファーさんに『女神の加護』について訊ねた。女神の加護というのは、その名の通り女神デューデ様から与えられるものなのだとか。
 特に日常生活では、加護を得ることで魔道具が使えるようになるという。他にも色々あるけれど、まずはこの件が大きな違いらしい。
 確かに幾つか使えない道具があったけれど……それは魔道具だったのかもしれない、と思う。
 
 この街で生まれた者は、母親の母体にも加護が宿っていることもあり、最初から加護が馴染んでいる。そして生まれた時に与えられるため、すんなりと加護を使うことができるのだとか。
 一方で地上から来た私たちは、そもそも女神の加護に触れたことがない。そのため、使い慣れるためにはかなりの時間が掛かる時もあるらしい。最終的にはそれは、個人の資質によるものと言われた。

「加護を与える儀式を終えたら、まずは僕が魔道具を使えるかどうかの確認をするよ。もし使えなかったら訓練かなぁ」
「頑張ります……」
「うん、頑張ろうね!」

 そしてセファーと共に書庫へと入っていく。
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