妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
「エーヴァ! エーヴァ!」

 聞き覚えのある声に私は重たいまぶたを少しずつ開いていく。明暗の差に目が慣れていないのだろうか、入ってくる光が眩しい。
 
 少しずつ目が慣れてくると、まず見えたのがアダン様の端正な顔……が少し歪んでいるように見えた。遠くには真っ白な天井も見える。
 まるでずっと寝ていた後のように気怠く、頭がうまく働かない。私は何故このような状況になっているのだろうか、と動き始めた頭でぼーっと考え始める。そしてしばらくすると、濁っていた水が川の流れによって押し出され、清らかで透き通った水に変わっていくように、私の思考も鮮明になってきた。

 そして、頭が冴え渡ると私はアダン様に抱えられている……という事実に気がつき、上半身を勢いよく起こした。

「あ、アダン様……すみませんでした!」

 顔を上げると、アダン様と視線がぶつかり合った。そして……どうして彼がここにいるのだろうか、と無意識に呟いていたようだ。私の言葉に答えるように、アダン様が答えてくれる。

「先ほどセファーが血相を変えて私の元にやってきたのだが……君が倒れたまま起きないと言われたんだ」
「だから僕がお願いして、寝具の上に連れて行ってもらおうと思ってたんだ〜! 床で寝たら痛いかな? と思って」

 セファーさんが奥を指す。すると、そこには確かにベッドが置かれていた。
 私のためを思って彼が働きかけてくれたようだ。そのことで私は二人にお礼を告げる。そんな私を見つめるセファーさんの眉尻は下がっており、懸念の色を見せている。一方でアダン様は……まるで壊れ物を扱っているかのような眼差しを私に注いでいた。
 小さい子どものやんちゃを優しく見守るような、どこか案ずる顔を見せる二人に、私は微笑んだ。

「お気遣いありがとうございます。身体は問題なく動きますので、大丈夫だと思います」
「何故倒れたのかは分かるか?」
「いえ……私は正直自分が倒れていたことに驚きましたので……」
 
 また周囲に迷惑をかけてしまった、そう判断した私の視線はどんどん下へと落ちていく……そんな時、私の両肩に手が置かれた。大きくて壊れモノを扱うような優しい手。それはやはりアダン様のものだ。
 その温もりを感じた私が思わず顔を上げると、アダン様は穏やかに微笑んだ。

「エーヴァに何もなくてよかった」
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