訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
エピローグ
央輔と想いが通じ合い、永遠に尽きることのない愛を誓い合ってから、早くも三ヶ月という時間が経とうとしている。
煌びやかなイルミネーションが都会の街を華やかに演出していたクリスマスシーズンもすぎさり、つい先日新年を迎えたばかりだ。
お正月気分が抜けきらない一月七日。
杏璃と央輔は、共に身支度を調え、自宅から渋谷にある国立能楽堂に向かおうとしていたのだが……。
「杏璃、そんな薄着で大丈夫なのか?」
いざ出かけようという段になって、思案顔の央輔からまたもやそんな声がかかった。
央輔から似たような言葉をかけられるのは、もう、何度目になるだろうか。
最低でも、十回は耳にした気がする。
数日前から気温が下がっているうえに、インフルエンザなどの感染症が流行しているため、央輔は気が気ではないようだ。
杏璃がいくら大丈夫だと言っても、央輔は聞く耳を持たない。
「結構着込んでるから平気ですよ。コートも羽織るし。それに、ほら、カイロも持ってるし、防寒対策はバッチリですから」
「そうはいっても、室内との気温差も気になるし、感染症も流行っているからな。やっぱり今日はやめといた方がいいんじゃないか」
央輔がこんなにも心配性だとは思わなかったが、央輔の気持ちだってわかるし、素直に嬉しい。
けれど、これからのことを思うと、今からこの調子で大丈夫なのだろうか、という気持ちだってある。
杏璃は心の中でふうと溜息を漏らしつつ、央輔に正面から向き合った。
「もう、央輔さんってば、心配しすぎですよ。そんなこと言ってたら、外に出られないじゃないですかぁ」
「俺は、そのほうが杏璃を独り占めできるからいいけどな」
「私だって、央輔さんを独り占めしたいですよ。それと同じぐらい、央輔さんの家族のことも大事にしたいんです」
「それは俺だって同じだ。……けど、杏璃にもしものことがあったらと思うと、心配でどうしようもないんだ」
央輔の不安を拭うために言い募っていたはずが、杏璃を大切に想う彼の気持ちに心を大きく揺さぶられた杏璃は、思わず央輔に抱きついた。
――推しの言葉には凄まじい威力が宿っている。
央輔に推し変してから、杏璃は何度も思い知らされてきた。
「……央輔さんに、こんなにも大事に想ってもらえて、とっても嬉しい」
「そんなの当然だろ」
すぐさま返ってきた央輔の言葉にも、迷いがない。
またしても心を打たれた杏璃はあやうくポロリと涙を零しそうになったが、何とか抑え込み明るい声を紡ぎ出す。
「でも、母は強しって言うでしょう? しかも、推しの赤ちゃんが付いてるんですから、鬼に金棒です!」
「そこは、赤ちゃんじゃなく、俺だろ」
「もう、央輔さんってば、可愛いがすぎますよ!」
「それは杏璃だろ」
「あっ、もうー! どさくさ紛れにキスするのやめてください。出かけるのいやになっちゃうじゃないですか~!」
「そうするか」
「もう、何言ってるんですか。家族が待ってるんですから。ほら、いきますよ」
昨年のクリスマスに、杏璃が新しい命を授かるという、ふたりにとって嬉しいプレゼントが届いた。
それ以来、央輔の心配性が続いているというわけである。
今日は、新年のご挨拶をかねて、杏璃の祖父の舞台を両家の家族で観劇してから、近くのホテルで食事をする予定になっている。
そこで、妊娠の報告をしようと決めていたのだが、杏璃を心配するあまり、央輔が出かけるのを渋っていたのである。
すったもんだあったものの、ふたり仲良くイチャつきながら手配してあったタクシーへと乗り込んだ。
煌びやかなイルミネーションが都会の街を華やかに演出していたクリスマスシーズンもすぎさり、つい先日新年を迎えたばかりだ。
お正月気分が抜けきらない一月七日。
杏璃と央輔は、共に身支度を調え、自宅から渋谷にある国立能楽堂に向かおうとしていたのだが……。
「杏璃、そんな薄着で大丈夫なのか?」
いざ出かけようという段になって、思案顔の央輔からまたもやそんな声がかかった。
央輔から似たような言葉をかけられるのは、もう、何度目になるだろうか。
最低でも、十回は耳にした気がする。
数日前から気温が下がっているうえに、インフルエンザなどの感染症が流行しているため、央輔は気が気ではないようだ。
杏璃がいくら大丈夫だと言っても、央輔は聞く耳を持たない。
「結構着込んでるから平気ですよ。コートも羽織るし。それに、ほら、カイロも持ってるし、防寒対策はバッチリですから」
「そうはいっても、室内との気温差も気になるし、感染症も流行っているからな。やっぱり今日はやめといた方がいいんじゃないか」
央輔がこんなにも心配性だとは思わなかったが、央輔の気持ちだってわかるし、素直に嬉しい。
けれど、これからのことを思うと、今からこの調子で大丈夫なのだろうか、という気持ちだってある。
杏璃は心の中でふうと溜息を漏らしつつ、央輔に正面から向き合った。
「もう、央輔さんってば、心配しすぎですよ。そんなこと言ってたら、外に出られないじゃないですかぁ」
「俺は、そのほうが杏璃を独り占めできるからいいけどな」
「私だって、央輔さんを独り占めしたいですよ。それと同じぐらい、央輔さんの家族のことも大事にしたいんです」
「それは俺だって同じだ。……けど、杏璃にもしものことがあったらと思うと、心配でどうしようもないんだ」
央輔の不安を拭うために言い募っていたはずが、杏璃を大切に想う彼の気持ちに心を大きく揺さぶられた杏璃は、思わず央輔に抱きついた。
――推しの言葉には凄まじい威力が宿っている。
央輔に推し変してから、杏璃は何度も思い知らされてきた。
「……央輔さんに、こんなにも大事に想ってもらえて、とっても嬉しい」
「そんなの当然だろ」
すぐさま返ってきた央輔の言葉にも、迷いがない。
またしても心を打たれた杏璃はあやうくポロリと涙を零しそうになったが、何とか抑え込み明るい声を紡ぎ出す。
「でも、母は強しって言うでしょう? しかも、推しの赤ちゃんが付いてるんですから、鬼に金棒です!」
「そこは、赤ちゃんじゃなく、俺だろ」
「もう、央輔さんってば、可愛いがすぎますよ!」
「それは杏璃だろ」
「あっ、もうー! どさくさ紛れにキスするのやめてください。出かけるのいやになっちゃうじゃないですか~!」
「そうするか」
「もう、何言ってるんですか。家族が待ってるんですから。ほら、いきますよ」
昨年のクリスマスに、杏璃が新しい命を授かるという、ふたりにとって嬉しいプレゼントが届いた。
それ以来、央輔の心配性が続いているというわけである。
今日は、新年のご挨拶をかねて、杏璃の祖父の舞台を両家の家族で観劇してから、近くのホテルで食事をする予定になっている。
そこで、妊娠の報告をしようと決めていたのだが、杏璃を心配するあまり、央輔が出かけるのを渋っていたのである。
すったもんだあったものの、ふたり仲良くイチャつきながら手配してあったタクシーへと乗り込んだ。