ようこそときめき部!~恋も夢も見つかるときめきだらけの部活動⁉
10、恋愛小説のような恋
翌日の放課後。
私と夏目先輩は、学院の校門前で待ち合わせることになったんだけど……。
「二年の夏目先輩じゃない!?」
「立ってるだけで絵になる~!」
女の子たちがひそひそと話しながら通りすぎて行く。
校門前でひとり私を待つ夏目先輩は、文庫本に目を落としたまま、小説の世界に入りこんでいるみたい。
私が隣にやってきても、先輩はまったく顔を上げることなく、本に集中していた。
うう、声かけづらいな……。本に集中しているときに話かけられるのって、いやだよね? もう読み終わりそうだし、少し待ってみようかな?
そうして待つこと十分。
先輩はぱたんと文庫本を閉じた。
「あ、読み終わったんですね」
私が声をかけると、夏目先輩は目を丸くして私を見た。
「咲森。来てたのか」
「はい、お待たせしました」
「いや、待っていたのは咲森のほうだろ。気が付かなくて悪かった」
「いえ! 全然です。集中して読んでいたみたいだったので、じゃましたくないな、と思って」
私の言葉に夏目先輩はまた驚いたように目をぱちくりさせた。
「先輩?」
「いや、なんでもない。行こう」
「はいっ」
私と先輩は並んで歩き出す。
こうやって男の子と並んで歩くことだけでも、私はそわそわしちゃうんだけど、夏目先輩はいつも通りのクールな無表情。
学院を出た私たちは、近くの公園に来ていたアイスクリーム屋さんに立ち寄った。
アイスクリーム屋さんのキッチンカーの前には、テーブルと椅子がいくつか並べられていて、私たちはアイスクリームを片手に、そこに腰を下ろした。
私はストロベリーとチョコレートのアイスクリーム。先輩は抹茶と期間限定のさくら味のアイスクリームを選んでいた。
「いただきます! う~冷たいっ」
四月の中頃で、気温も春のぽかぽか陽気だけれど、カップに入ったアイスクリームがあまりに冷たくてびっくりしちゃった。
「おいしいです!」
「……そうだな」
夏目先輩はなにか考えるように私を見て、それから抹茶アイスを一口、スプーンによそう。
それを私の前に差し出した。
「え?」
目をぱちぱちさせながら見ていると、先輩は眉間にしわを寄せて、スプーンを更に私の口元へとよせる。
「わからないのか?」
「え? なにがですか?」
「デートの定番と言えば、あーんだろ?」
「あーん!?」
私は驚いてあんぐりと口を開けてしまう。
夏目先輩はその隙に、私の口の中にスプーンを突っこんだ。
「んぐっ!?」
「うまいか?」
「は、はひ……」
抹茶の渋みよりもやさしい甘さが口の中で溶けていく。
私が「おいひいです」とこくこくとうなずくと、先輩は頬をゆるめた。
「そうか」
夏目先輩のこんな柔らかい表情は、はじめて見たかも。