ようこそときめき部!~恋も夢も見つかるときめきだらけの部活動⁉

 伊瀬先輩にわたされたのは、一枚の紙だった。


「あめんぼあかいな、あいうえお……? 先輩、これはなんですか?」


 先輩からわたされた紙には、五十音順に文章が並んでいる。
 私が首をかしげていると、伊瀬先輩がていねいに説明してくれた。


「こ、これは発声練習と活舌の練習に使う詩なんだ。いきなり声を出すと、のどを痛めてしまったり、そもそも声が出にくかったりするから、まずなにをするにも、この詩で声を出す練習をするんだ。ぼ、僕が最初にやってみせるから、咲森さんもその紙を見ながら、言ってみてくれるかな?」
「はいっ」


 伊瀬先輩はううんっ、とのどの調子を整えると、足を肩幅まで開いた。
 そして、大きく息を吸う。


「あめんぼあかいなあいうえお!」


 教室中がびりびりとするような、大きくてはきはきとした声だった。
 さっきまで小さな声で話していた先輩から、こんなに大きな声が出ると思っていなかった私は、びっくりしてすぐに口を開くことができなかった。

 伊瀬先輩すごいっ! さすが放送部の先輩だ! こんなに大きな声が出るんだ!


「さ、咲森さん? えっと、続けてほしいんだけど……」


 先輩はまた少しもごもごとした話し方にもどって私に言う。


「あ、す、すみませんっ! あ、あめんぼあかいなあいうえお!」
「さ、咲森さん。声はよく出ているけど、そのままだと、のどを痛めてしまうかも……。腹式呼吸っていう、お腹に力を入れて声を出せるかな……?」
「やってみます!」


 それからも伊瀬先輩による、発声の仕方、きれいに発音できるような活舌の練習などを中心に教えてもらった。


「腹筋とかも鍛えておくと、声が出やすくなるかも……」


 腹筋……! ひゃあ~運動部みたい。

 放送部って意外とやることがたくさんだ。
 ただ話すだけじゃなくて、その話すためにすることがたくさんある。


「の、のどは楽器と同じで、自分の身体のメンテナンスも大事なんだ……」
「そうなんですね!」


 声は身体の楽器って言うもんね。きっと身体が資本なんだ。

 知らないことばっかりで、私は驚いてばかりになっちゃった。


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