手を、つないで
8.航



 オートロックの扉が閉まる。
 彼女は、扉が閉まる瞬間まで俺を見ていてくれた。
 顔色は、少し落ち着いてピンクの頬。
 ……だから可愛過ぎだって。
 追いかけて抱きしめて、離したくない。
 でも大事にしたい。するって決めた。

 呪いたいほど口下手な自分の告白でも、彼女は受け止めてくれた。

 付き合う。
 彼女が。俺と。

 まだ信じられない。
 でも、ついさっきまで、手をつないでた。彼女の手のあったかさは、まだ残ってる。
 小さくてやわらかくて、驚いた。

 『私も信じられませんけど』
 同じことを思ってた。
 嬉しくて、笑った。彼女も笑った。
 あんな風に笑う彼女を見たことがなかった。

 『また明日』
 何でもない、ごく平凡な挨拶が、特別になる。




< 15 / 31 >

この作品をシェア

pagetop