手を、つないで
定時30分前。
スマホが震えた。
プライベートのメッセージ。
発信者は『松永航』。
体の真ん中が、きゅっとなった。
早く見たい、けど今は仕事中。でも。
コーヒーを飲むついでを装って、スマホを手にする。
ーーー今日は残業ですか
また、体の真ん中がきゅっとなる。
えっと、これはプライベートの方だよね?
確認する。アプリが違う。社内チャットじゃない。
ーーーはい、残業です
返事をすると、すぐに既読になる。
ーーー俺もです
そうなんだ。相変わらず忙しいんだな。
『無理しないでください』って送ろうとしたら。
ーーー帰り、送らせてもらえますか
ーーー遅くなると、心配なので
えっ。
帰りに会えるってこと?会ってもいいの?
ーーーはい、お願いします
ーーー終わったら連絡ください
また、体の真ん中がきゅっとなる。3回目。
でも疑問に思う。私の方が早く終わったら、彼の仕事はどうなるの?待ってていいのかな。
そう思ったら、またメッセージ。
ーーーこちらは調整できるので、そちらの目処が立ったら連絡もらえると助かります
仕事の連絡みたい。笑いが漏れる。
ーーーわかりました
またすぐ既読になった。
ふう、と一つ息をつく。
視線を感じた。横を見る。
早苗ちゃんが、にまにましていた。
「なーんかいいことあるかなー」
独り言のようにささやいて、モニターに向き直った。
えっと……近いうちに、ちゃんと話そう。