手を、つないで
ビルの入り口を出て、駅とは反対に少し歩く。
角を曲がったら、彼がいた。
所在無げに立っている。上を見上げて。
私も見上げてみる。何を見てるんだろう。ビル?空?
背丈が違うと、見えてるものも違うのかな。
暗い空を眺めていると、彼が近付いてくる気配がした。
見ると、また手で口を押さえている。癖なのかな。でも会社では見たことない。
「お疲れ様です」
笑顔が出た。会えたのが嬉しい。
「……お疲れ様です」
ごにょごにょが返ってきた。彼の顔は赤い。照れてるみたい。
「行きましょう、か」
「はい」
並んで歩く。
駅までの道。20時過ぎ。
とりあえず会社の人は周りにはいない。
そう思っていたら。
「今日は、まだ誰かに見られても、偶然一緒になった、で通せると思います」
……私、そんなに思ってることが表に出るんだろうか。
「中森さんは、わかりやすいです」
「……そうなんですか……?」
そんなこと言われたの、初めてかも。
「見てれば、わかります」
え……。
彼を見上げたら、また手で口を押さえてる。
「俺の、場合は……ずっと見てたから……」
ごにょごにょ。彼の顔がまた赤くなる。
私も熱くなってきた。
胸の辺りがむずむずする。
「……私、も……」
恥ずかしい。恥ずかしいけど、伝えたい。
「これから、ずっと、見ていたい、です……」
彼のことが、見ただけでわかるほど、見ていたい。
「……はい」
微笑んで、答えてくれた。