手を、つないで
体がふわふわする。
遠くで声が聞こえる。
「ごめん、じゃあよろしくね、高井戸さん」
「はーい、お疲れ様でした。旦那様によろしく〜」
平野さんと、高井戸さんの声……?
「中森さーん、具合悪くない?」
「はい……だいじょう……ぶ、です……」
あ、れ?私寝てた?
周りの人達がいなくなってる。
「今、松永トイレ行ってて、戻ってきたら俺は2次会行くから」
向かいに高井戸さんが座ってる。
「他の人達はみんな2次会行くか帰るかしてて、俺と松永は会計と忘れ物チェックってことで残ったんだ。中森さんは寝ちゃってて、今平野さんから託されたところ。平野さんは、旦那さんが迎えに来てくれたんだってさ。愛されてるねえ」
うんうん、と高井戸さんは頷いてる。
「多分、他の人は平野さんと中森さんが一緒に帰ったと思ってるから。松永は、2次会行かないってみんな思ってるし。『彼女いるんで』だから」
高井戸さんは、自分で言ってぶふっと笑った。
「いやあ、あんな松永が見られるなんて思わなかったなあ。ほんと、おもしろいやつ」
さて、と高井戸さんは立ち上がった。
「じゃあ会計は終わったんで、俺は2次会行きます。お疲れ様でした〜」
「えっあの高井戸さん」
ちょうどガラッと戸が開いて、彼が来た。
「おっお疲れ〜じゃあな〜」
「……おう」
彼と入れ違いで、高井戸さんは出て行った。
彼は高井戸さんを見送ってから、こっちを向いた。
「大丈夫ですか?具合悪くないですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
答えたら、彼が少し笑った。
「……強いですね。酒」
は、恥ずかしい……。
「あれだけ飲んで、酔ってないって……」
笑いを堪えてる。
「酔ってます……少しは」
そう言っても、彼はまだ笑ってる。もう。
「大丈夫なら、帰りましょうか」
「え、あの、一緒に、ですか?」
彼が止まった。ああ、私ってば言い方。
「違うんです。あの、一緒にいるところを誰かに見られたら、と思って……」
彼はすぐに理解してくれた。
「なんとでも言えます。途中で会ったとか」
きっぱり言う。
「もし、誤魔化せなかったら、言ってもいいと思ってます、俺は」
「……え?」
すぐに理解できない。
彼の言葉を頭の中で繰り返そうとしたら、彼が言った。
「とりあえず、出ましょうか」
優しい目で、私を見ている。
「……はい……」
立ち上がったら、体がふわふわしていた。
酔っているのにプラスして、彼の笑顔と優しい目にやられたみたいだった。