一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
一夜限りの関係
 目を開けると、知らない天井が広がっていた。

 あれ。ここ、どこだっけ?
 瞬きをして、頭の中を起こす。

 なんだかすごくフカフカなベッド。

「うーん」

 鉛のように重い身体を反転させ、真横を向いた。
 そこには――。

「おはようございます。小春さん」

 男の人?
 ブラウンの髪の毛に目鼻筋は通っていて、瞳はどこか鋭く、見つめられただけで心を見透かされてしまいそう。
 綺麗な肌の男の人が上半身裸でこちらを見ている。

「昨日はぐっすり寝てましたね」

 柔らかな口調で口角も上がっているのに、この(ひと)のことを危険と感じた。
 
 ふと自分が下着姿なのに気づき
「えええええーー!!」
 大声で叫ぶ。
 
 これは夢じゃないよね?

 バッと上半身を起こしたけれど、感覚はあるし、軽い頭痛もしてきた。
 このシチュエーションはヤバい。
 私、昨日は酔っちゃって……。
 それで……?

「あっ、えっと。その……」

 動悸がする。
 まずい、まずい、まずい。私、この人と……。

「昨日の夜、可愛かったです。俺、女の子から責められたの初めてだったから、ドキドキしました。覚えてますよね?」

 覚えていませんとは言えない雰囲気だ。
 ていうか、これは完璧なる事後だよね。
 だんだんと記憶が甦ってくる。

「俺、もっと小春さんのことが好きになりました。付き合ってください」

 ニコニコと笑っているけれど、本気で言っているの?
 このイケメン、信じちゃいけない気がする。

 だって
「どうして素顔を隠してたんですか?」
 鮮明に覚えている、私が昨日デートをしていた男性とは容姿が変わっているから。

「うーん。小春さんに対等に接してほしくて」

 彼は少し考えたあと、首を傾げながら悲しそうに微笑んだ。
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