一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
「仕事が忙しくても瑠璃がいるから頑張れる。お前とは大違い」

 私、そんなに新に酷いことしたっけ?
 わざわざここで言わなくてもいいじゃん。真宮さんだっているんだから。恥ずかしい。

「うるさいな!私だって新と別れてせいせいしてるよ!もう面倒みなくていいから、楽!」

 強がりに思われたかな。

「そうかよ。ま、いいや。瑠璃、行こう。こいつの顔見ているとイライラしてくる。小姑みたいだな。瑠璃の方が年上だけど、お前の方がおばさんに見える」

「はぁ?」

 私は立ち上がり思わず新を殴ろうとしてしまったけれど、真宮さんが止めてくれた。

「すみません。小春さん、酔っているみたいで。だけど、あまり彼女のことを悪く言わないでください。俺も腹が立ちます」

 え、真宮さんかばってくれてるの?

「小春にあんたみたいな男友達いたっけ?もしかしてセフレとかですか?それならやめておいた方がいいですよ、こいつ、強引なんで」

 ハハっと新は笑った。
 ムカつく、ぶん殴りたい。拳を握り締める。

「《《葉山さん》》。早くここから離れてください。お互いのためにも」

 あれ、私、真宮さんに新の名字なんて教えたっけ?
 言ってない気がするけど、酔ってたから覚えてないや。

「瑠璃、行こう」

 新は瑠璃さんの手を引き、歩いて行った。
 瑠璃さんは私を見ながら、ハハっと笑っている。

 なんだろう。席にもう一度座ると
「小春さん?」
 涙が出てきた。

 溢れてくる涙を必死で拭う。
 恥ずかしい、悔しい、イライラする、抑えていたものが一気に解放されてしまった。

「真宮さんっ!ごめんなさいっ、今日はもう帰りますっ」

 あんなことを言われて、真宮さんとどう過ごせばいいのかわからない。
 私はバッグを持ち、お会計に向かった。

「ちょっ!小春さん!?」

 急に立ち上がって、歩いたから、フラフラする。
 転びそうになったところを真宮さんが支えてくれた。
 どうしよう。こんな顔、店員さんにも見られたくない。

「これで」

 真宮さんが店員さんにカードで支払っているのを見た。
 お店を出たら、お金を渡そう。

 真宮さんに支えてもらいながら、お店を出る。

「真宮さんっ、本当に今日はありがとうございましたっ!さっきのいくらですか?」

 支えてくれる彼の腕を避け、お財布を取り出そうとした。

「いいです。今日は俺が誘ったので」

「そういうわけにはっ!」

 ああ、やばい。倒れそう。

「小春さんっ!」

 真宮さんがまた支えてくれ、スッと引き寄せられた。
 
 私、今、真宮さんに抱きしめられてる?
 彼の胸に頭をつけている気がする。

「そんな状態で帰せません。もうちょっと休んでからにしましょう。あれ、小春さん?」

 遠くで真宮さんが私を呼ぶ声がするのを目を閉じて聞いている。
 顔が熱い、ああ、どうして新になんて会っちゃったんだろう。
 
 しかもあんなこと言われて上手く言い返せない自分が嫌だ。
 最後くらい綺麗な思い出で埋めたかったのに。瑠璃さん、キレイだもんな。私なんか敵わない。

「こんな女、フラれて当たり前ですよね。可愛くもないし、性格もキツイし、バカだし……。選ばれなくて当然ですよ」

 真宮さんの胸の中で愚痴をこぼす。

「俺は小春さんのこと、可愛くて優しくて、好きです。危なっかしいところも含めて」

 真宮さんの声が耳元でする。聞きやすいけれど、低い声。

「好きなんて、軽く言わないでください!」

 真宮さんは何も悪くないのに、悪酔いしすぎだ。
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