一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
「私はもうあの人に気持ちはないです」

 未練なんてないのに。

「すみません。俺、独占欲が強いのかもしれないです。恋愛なんてずっとしてなかったでこんな気持ちになるのは、はじめてで」

 いつもと違う詩音さんに戸惑うけれど 
「私は詩音さんが好きです」
 上にいる彼のことをギュッと抱きしめると
「はい」
 額を私の肩にあて、力なく彼は頷いてくれた。


 その日の夜は、詩音さんと食事をして、詩音さんは残っている仕事を家で処理すると言い、私を送り届けたあとすぐに帰った。
<今、家に着きました>
 彼はこまめに連絡をくれる。

 ピコンとスマホが鳴り、相手が詩音さんだと思い表示を見ると、新からのメッセージだった。

「なんだろう」

 タップをして確認をすると
<今日はいきなりごめん。同棲してた時の小春の荷物が俺の荷物に紛れ込んでた。渡したいから、どこかで会えないか?>
 ごめんという予想もしていなかった言葉から文章が始まっていた。

 荷物ってなんだろう。二人で会いたくはない。
 かと言って、同棲していた時の荷物を詩音さんの前で渡されても嫌だ。
<荷物ってなに?>
 返信をすると
<これ>
 ピコンと写真とともに送られてきたのは、ギフトボックスに入った時計だった。

 これ、ずっと探していたのに。引っ越しする時に、アクセサリー類が入った荷物の中に入れたはず。なのにこれだけ入っていなかった。
 これは就職した時に母がお祝いでプレゼントしてくれたもの。捨てないでほしい。

<わかった。仕事終わりに渡して>
 
 さすがに社内だったら、新の行動も制御される。

<いや。話したいこともあって。いつも二人で行ってたカフェで仕事終わりに待ってる>

<一方的に言われても無理だよ>

 そう返信をしたけど、既読がつくことはない。
 お母さんからの時計は返してもらいたい。
 気分は最悪だ。
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