一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています

新の後悔

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「ねぇ、新。写真なんか撮ってどうしたの?」

 ひょいっと悪びれもなくうしろから現れた瑠璃は、小春の時計を手にしていた。 

「ああ。それ、昔の友達のだよ」

 瑠璃に本当のことがバレると面倒だと感じた新は、パッと瑠璃から時計を奪い取る。

「えっ。今のって、女性物じゃなかった?」

 昔の友達と言われ、最初は不審には感じていなかった瑠璃も、よく考えてみれば時計のデザインや大きさからレディース向けのものではないかと新に問いかけた。

「別にいいだろ。昔の友達って言ってるじゃん。それより、飯はまだ?」

 ギフトボックスの中に再び時計を戻すと、彼はクルッとうしろを向き、キッチンの方へ目線を向ける。

「ご飯?ああ、炊けたみたい。今日はね、デパ地下で買ってきたの。お気に入りのお店が新作のサラダを出してたの。楽しみ」

 彼女は足取り軽くキッチンへ向かう。
 新は食卓に並んでいる夕食のメニューを見て
「はぁ」
 ため息をついた。

「今日もまた買ってきたの?なんか作れたりしない?毎日こんなんじゃ、食費とかヤバいんじゃないか?」

 今までは黙っていた。
 付き合った当初は手料理だと言って、いろんなものを振舞ってくれ、瑠璃の料理上手なところにも新は惹かれていた。
 元彼女の小春は、見栄えはあまり気にしない女性だったが毎日何品か作ってくれ、今思えば健康的な食事だったんじゃないかと思う。

「そうだよ。なんで私が毎日料理を作らなきゃいけないの。私だって毎日仕事で疲れているの。今日は新だって残業してないんだから。作ってくれたって良いじゃん」

 逆に瑠璃を怒らせてしまった。

「はっ?なんで俺が作んなきゃいけないんだよ。立場考えろよ」

 つい出てしまった本音に
「立場ってなに?新の方が上司だけど、ここはプライベートだよ。それに、私たち結婚までするのに、立場なんて関係ないじゃん。今時そんなこと言ってたらモラハラって言うんだよ」

 瑠璃から簡単に反論をされ
「チッ」
 何も言えなくなった新は、悔しいためか思わず舌打ちをした。

「今、舌打ちしなかった?酷い!」

 瑠璃は自分のバッグとスマートフォンを持つと
「イライラするから、外に行ってくる」
 ドンドンと勢いよく廊下を歩きながら、玄関から出て行った。

 新は瑠璃を追うことはしない。

「好きにしろ。調子に乗りやがって」

 玄関の方へ吐き捨てるようにして呟くと
「小春、絶対後悔させてやるからな。真宮も俺もバカにするような態度を取りやがって。小春は俺みたいな男を選ぶってわからせてやる」
 ギリッと歯を食いしばった新は、小春の時計を見つめていた。
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