夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます

第1話 再会は小さなバーで突然に

 静かなピアノジャズが流れる店内は、ほっと落ち着く柔らかな光が灯っている。

 五つのカウンター席には私と見知らぬ男が座っている。後ろにあるテーブル席には、上質なスーツを着た三十代くらいの男性が二人座っている。会社員だろうか。いかにも仕事ができますって空気をまとった二人は、時折、笑みを見せて静かに話している。

 いつもなら常連の人たちの談笑が聞こえてくる時間だけど、今日は少し静かだ。こんな日も悪くないな。

 カラカラだった喉に流れる冷たいジントニックに、ほっと吐息をつく。プチトマトのカプレーゼを摘まみながら、今日はこれ一杯で帰ろうかな、なんて思っていた時だった。

 一つ席を挟んだ横にいる男が「デートしよう」とバーテンダーの真奈さんを口説き始めた。

「お姉さん、こんな仕事やってるくらいだし、彼氏いないでしょ? 俺、年上でも全然いけるんだよね」
「そうやって何人の女性を口説かれているんですか?」
「お姉さんだけだって。俺、マジだよ」

 カウンターから身を乗り出す勢いで、男はぐいぐいと迫っていく。
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