夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 私を抱きすくめながら尋ねる声は、少し震えている。
 肩の締め付けが少しだけ強くなった。

 渉さんの胸を少し押し、顔を上げると、少し厳しい眼差しが向けられていると気づいた。
 怒っているのかな。

 大人しく渉さんの迎えを待っていれば、こんなことにはならなかったもんね。奥さんに怪我をさせることはなかったし、渉さんが殴られることだってなかった。
 少し腫れた唇にそっと触れて「ごめんなさい」と謝れば、渉さんの指が私の手を掴んだ。

「でも……どうしても、プレゼントを買いたかったの」
「プレゼント?」
「奥さんに無理をいって、渉さんへのクリスマスプレゼントを買いに行ったの」

 少しだけ渉さんの手から力が抜け、腫れた唇の端が震えた。
 
「百香ちゃんの命と比べたら、そんなもの」
「違うの!……渉さんとお揃いのグラスなら、また、ジントニックを飲めるんじゃないかって……だから、ペアグラスを探して」

 渉さんへのプレゼントといいながら、結局考えていたのは自分のことだ。もっと、自身の置かれた状況を理解するんだった。そうすれば、誰も傷つけることなんてなかったのに。
 私さえ、我慢すれば──
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