夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 仲良くなったのは十五年前のこと。その時、私はたった9歳で渉さんは高校一年生だった。近所でも評判のイケメンで、恋いをしていたのは私だけじゃないと思う。
 その頃から遠い存在だと思っていた。

 だけど、クラスのいじめっ子とケンカになったあの日。
 クラス委員だった私はいじめられてる女の子を放っておけなくて、口論になった。でも、いじめっ子は私に傷つけられたって担任に泣きついて──

 味方だと思っていた担任に「心を傷つける言葉は刃物だ」といわれ、喧嘩両成敗という都合のいい言葉を覚えた。
 悔しくて、悔しく、涙が止まらず公園で泣いていた。

 15年前に心に刺さった棘が、胸の深いところを今でも抉ってくる。だけどあの日、お兄ちゃんは私の背中を擦ってくれた。
「辛かったね。杏果ちゃんは間違ってないよ」といって、側にいてくれた。
 優しい顔を思い出すと、突き刺さった棘が消えるような気がする。

 優しい香りがするハンカチと名刺を見つめ、深く息を吸って顔を上げた。
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