夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 スマホを内ポケットにしまいながら、人混みに流されるようにホームへと出た。

 人の流れに目をやり、この中で問題を抱えた人間はどのくらいいるのかとふと思う。
 統計的に見れば、トラブルに遭遇していると推測されるのは十人に一人くらい。その中で弁護士事務所の門を叩くのは、二、三割といったところだろう。
 つまるところ、七、八割の被害者は泣き寝入りをしている。

 幼かった百香ちゃんは、そういった世の不条理に立ち向かおうとして、理不尽な大人の壁に阻まれて泣いていた。
 しゃくりあげながら「どうして悪いことをした子は謝らないの。私が悪い子なの?」と訊かれ、高校生だった俺はとっさに言葉が出てこなかった。

 親の敷いたレールの上をいくことに反発する自分が、ちっぽけに思えた。
 弱者を守るため、百香ちゃんの質問に答えるためにも、もっと学ぼうと決めた。親のためじゃない。人を助けるために、弁護士を目指すんだと。

 改札を抜け、駅を後にすると足早にオフィス街へと向かった。
 ここから自社ビルまでは十分程度。今日も昼飯を食べながらメールの返信に追われそうだな。
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