夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 午後の予定を脳内で繰り返しながら、無機質なビル群の中を足早に進んだ。すると突然、春が訪れたように、ピンクのキッチンカーが視界の隅に映った。
 思わず足を止め、車体の文字を目で追う。

「MOMOTA……もしかして、百香ちゃん?」

 腕時計をちらりと見て、踵を返した。
 駆けよると、そこにMOMOTAのロゴが入った茶色のエプロンとベレー帽姿の百香ちゃんがいた。にこやかに接客する姿は花が咲いたようで、弁護士になりたいといって頑張っていた姿を彷彿とさせた。

「いらっしゃいませ!──渉さん」

 俺に気付いた百香ちゃんは、つぶらな瞳を目いっぱい見開き、少し照れたように笑った。

「偶然見かけて。これから昼飯なんだけど、オススメどれかな?」
「今日のオススメはハーブチキンのサンドで、日替わりスープはカボチャスープです」

 メニューを指差して案内する百香ちゃんは、でもと呟くと商品が並ぶガラスケースに視線を移す。

「個人的には、ごぼうサラダの白パンやキノコのクロックムッシュがオススメですよ。それと甘いのが食べたいなら、定番のアンパンもいいですし、ドライフルーツのスコーンも美味しいですし──」
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