夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「渉さんの勤め先には、いっぱい優秀な方がいますよね? そういった方の中にはもっと」
「百香ちゃんじゃないとダメなんだ」

 今の百香ちゃんには俺が必要だ。そう思ってしまうのは、ただのエゴだろう。人によっては公私混同だと、俺を笑うだろう。
 それでも、信じている。百香ちゃんの中には確かな正義感と、諦めない心があると。昔から俺を支え続けてくれたのは、彼女なんだ。それに──

「生涯をかけて、百香ちゃんを支えたいと思ってる」
「……え?」
「支えるだけじゃない。時には、百香ちゃんに寄りかかりたい。……公私ともに、支え合えるパートナーになって欲しい」

 プロポーズは顔を見てしたかった。
 きっと、タイミングは今じゃないんだろう。だけど、たった一人でも君を求めている人間がいることを、君が救いになった男がいることをわかってほしい。

 戸惑う声が「え、あの、それって」と耳に心地よく響いた。
 深く息を吸い、改めて言葉を紡ぐ。

「法律のことは俺が教える。俺のパラリーガルになってくれるね?」

 少しの間を置いて、百香ちゃんは確かに「はい」と頷いた。
 プロポーズの返事は急がない。まずは、ここからだ。
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