夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 それって、もしかしてプロポーズ?──驚きすぎて、言葉が出てこなかった。素直に訊けていれば、渉さんはなんて返したんだろう。優しく、そうだよって笑ってくれたのかな。

 頬を濡らす涙を拭って「頑張ろう」と声に出してみた。

「今度こそ、諦めない」

 声に出せば、不思議とやる気が膨れ上がった。
 渉さんが認めてくれるパラリーガルになって、今度こそ、胸を張って隣に立とう。


 翌日、客足が落ち着いた夕方に事務室で桃田店長に声をかけた。

「折り入ってご相談があります」
「どうしたんだ。有給休暇の相談か?」
「いいえ、その……夢を叶えるために、もう一度、勉強をしようと考えています」

 パソコンに向かっていた店長は動きを止めると、真摯な眼差しを私に向けた。そうして、小さく「そうか。少し待ってくれるか」といって立ち上がると、店頭へと出てしまった。

 一人待ちながら、どう話すのが正解なんだろうと考えた。

 パラリーガルを目指すということは、いつかはMOMOTAをやめることになる。もちろん、今すぐという話しではない。
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