夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 仕事を引き継ぐ人を探す必要もあるから、事前に相談は必要だと思うのよ。でも、パラリーガルとして働くのがいつからかなんて決まってもいない。渉さんが事務所をいつ立ち上げるかも、まだ聞いてないし。

 ぐるぐる考えていると、店長は店番をしていた奥さんを連れて戻ってきた。

「待たせたね。二人で聞いた方がいいかと思ってね」

 いつもの椅子に腰を掛けた店長の横に、奥さんは空いている椅子を引っ張ってきて並べる。

「勉強っていうのは、学校に通うということかい?」
「いいえ、独学です。だから、今まで通り働きながら学ぶようになります」
「資格を取るということか?」
「……そんな感じです」

 曖昧に頷くと、店長夫婦は顔を見合った。
 渉さんは資格を取る必要はないといっていた。渉さんが個人事務所を立ち上げた後、そこで一年実務経験を積んだら日弁連の資格を取ればいいって。

「資格を取るには、実務経験も必要で……」
「それは、パン屋ではダメなの?」

 奥さんの声に、申し訳ない気持ちを抱きながら頷く。

「勤め先は決まっているのか?」
「いいえ。今はまだ働けるだけの知識がないので、まずは基礎を学ぶところから始めることにしました」
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